「B」 > vol.4
MUSICA
 ソロ作3枚を通して続けて来た連載インタヴューマガジン「阿部ちゃんと海」。遂に今回が最終回になりました。
 ーーが、これが前例なき波乱の内容で。
 まずは前回の最後の発言を繰り返しましょう。

■阿部さん、これからどうしていくんですか?

「………へ?」

■どうしてくんですか?

「もう、次のに取りかかってますよ。まあでも、何よりも名前を変えなきゃいけないんで」

■ん?

「名前をね、変えるんですよ、俺はこれから」

■……名前、どうするの?

「ええっとね……これ、どうする? 言っていいのかな? いや、でも、言わないとおかしいよね」

■ん?

「実はーーーー」

 このインタヴューをしたのは11月中だったんですが、インタヴュアーである僕もまったく知らされずにいきなりこの展開。  いや、実はアルバムを2014年にリリースするのは知ってたんです。そういう予定と流れと実際に制作に入っているのは知っていました。なので、このインタヴューも自然とそういう流れになるんだろうと、そのつもりで進行していたんです。
 しかしいきなり「名前を変える」と。
 何で変えますか? 名前を。ソロ3部作を合わせるような、まるで合体ロボの完成形のようなアルバムを出す時に、その3部作と名前を変えるのか? 数々のトリッキーなミラクルを連発してきた「阿部劇場」の中でも、これはとびっきりのマジッックーー慌てて字を間違えてしまいましたーーマジックだと思いませんか?
 というわけで、その改名に対する公式見解を含めた貴重なインタヴューをここに届けますよ。

「あのね……次なる段階に入ってるんですよ。この『R』と『G』と『B』っていうのは……なんてたとえればいいんだろう?……………映画館上映みたいなもんですよ、この3枚の作品は」

■はぁ。全然わかんないんですけど。

「で、僕が次に取りかかってるのは、DVDで」

■…………………。

「ふふふふふ。つまりですね、何を意図して今回3枚作ったかっていうと、アルバムを最初から意識してるんです。なので、これをどうにかまとめられないかということを考えてるんですよね」

■なるほど。つまりはこの3枚のCDの総集編+αのようなアルバムを作ろうとしていると。

「そうそう。それが可能か不可能かちょっとわかんないんですけど、それに今、トライしてるということです」

■シンプルにお訊きしますけど。今回それぞれ全部4曲ずつですよね?

「はい」

■この4曲×3枚=12曲でパッとまとめるっていう話なんですか? それとも――。

「本当はそうしたいけど、そうならないっすよね。何故かって言うと、EPの4曲単位のブロックとして僕は作ってるんで。それがアルバムとして成立するのか?っていうのが、あるからです。ある意味ベスト盤っていうか……僕は、アルバムっていうか、同じパッケージに曲を入れるって、凄いこだわりがあるんですよ」

■アルバムは曲数で満たすものではなく、そのボリューム感で世界観を描くものだからですよね。

「なので、この中からピックアップして、長いもの(アルバム)を作れるのかな?っていうふうに疑問を感じるんですよね。どうでしょう?」

■難しい所ですよね、役割が3枚の中ではっきりしている曲が多いから、集めると自ずとベストアルバム、オムニバスアルバムのようになっていくし、それが通用するかどうかはーー。

「そうは上手く物事はいかないからね。しかも、そういう(器用な)仕事をあんましないし。だから、アルバムになるのかな?…………したいなと思ってんですよねぇ」

■この3枚は映画なんですよと。で、次のアルバムはDVDなんですよと。凄く面白い比喩の仕方だと思うんですけど。その映画っていうのは、要するに作品――自己表現を観たい人がわざわざ映画館まで足を運んで観に行くものですよね。だから、非常にアート性が優先される。それを不特定多数とか最大公約数とかライトユーザーに届けるものがDVD、ここではアルバムという話ですよね。

「そそ、アルバムはそのためにあるよね。本当は、3枚で終わるのがいいのかもしれないよね。でも、僕はこれは世の中の人にいっぱい聴いてもらいたい気持ちがあって、DVD(あくまでもここではアルバムのことです)にしたほうがいいなというふうに思って、働きかけをして。それに賛同してくれる人がいて。だったら、やめる理由はまったくないよね? ということで、また延々スタジオに入ってるというわけです」

■なるほど。

「何曲作ってるかわかんないよね。昨日もずっとスタジオでやってたけど、なかなか繋がんないんだよね(笑)、この3枚の内容や音楽が」

■あと、これは言ってみれば、全部ひとりで作ったわけじゃないですか。

「そう」

■阿部さん以外、誰も知らない世界がこの12曲なわけじゃない。それをもう1回、また誰も知らない阿部さんだけの世界として作り上げるというか、構築し直すのって、とても難しそうですよね。

「そう、とても難しいですね」

■そういうことを人はできないから、リミキサーとかプロデューサーっていう人達がいるんじゃないのかなって僕は思うんですけど。

「なるほど(笑)。でもリミックスってさ、本チャンを超えないでしょ?」

■まあ基本、本チャンを超えようとしてないしね。

「してない。……まだ作業中なんで、なんとも言えないですけど。できれば僕はこの『R』『G』『B』の世界を広げたアルバムにしたいんですよ。そういうことを考えて、今スタジオに入ってるわけですよ。そうすると、できれば名前を変えたいって思うわけです」

■はあ。一気に話がわからなるんですよ、そこで。

「これ、言っちゃダメなのかな? これは言うのやめとこっか(笑)。……でも、素直に話すよ」

■あのね、何がわかんないって、このアルバムに向かうテンションとストーリーは理解させていただいてるんですけど、それが集約された結果「俺の芸名を変える」っていうのが、まったくその意図がわかんないです。

「はははははははははははは!」

■そんなに笑い事ですか?

「いやいや(笑)。長いこと今話してきましたけど。音楽に接していくスタイルが自分で見えてきたっていう話を、前回したと思うんですけども。それがまず固まったんですよね、この『B』作って。だから……邪魔なんですよね。今までのものが」

■今までの自分が。

「はい。…………50前にして、前のめりになるっていうか(笑)。守りには入らないっていうか」

■壊して、脱ぐと。

「うん。今までやってきたものを否定するわけじゃないんですけど、過去にすがる気はないっていうか。今までのキャリアとまた違うステップに俺は入ったなと思ったんですよね」

■いち表現者として?

「はい。なので……名前を変えたいっていう(笑)。これ、まだ誰にも話してないことなので、自分でも全然整理出来てないんですけどね」

■阿部さん、その名前も決まってんの?

「ほぼ」

■では、それを教えてください。

「ははははは! 本当に鹿野さんは面白い。こんなストレートなインタヴュー、誰にも出来ないよ」

■いやいや。この連載、一応阿部さんと私の作品ですから。

「そうですね。僕も鹿野さん以上にそのつもりで楽しんでますよ」

■にも関わらず知らないっていう、まぬけなものにはしたくないんですよ。

「そりゃそうだ。とりあえずね、海外の人とやりとりしてたじゃないですか。その時に、圧倒的に覚えられないと思ったんですよ、自分の名前が」

■義晴が?

「うん、Yoshiharu Abeって名前が。俺が外人だったら、たぶん覚えられないね。好きなんですよ。 名前は。自分の名前大好きなんですけど、そういう意味ではなかなか向いてないなっていうのもあり…………ABEDONと」

■あはははははははははははは!

「ABEDONにする予定です」

■あはははははははははは(段々笑いが声にならなくなり、ヒーヒー言っている)」

「笑い過ぎでしょ、鹿野くん!」

■ヒーヒー、すいません。なんか凄い、新しい超大盛りのカップ麺か丼飯みたいな。

「(笑)いろんな人にちょっとずつ相談してるんですけど、いろんな意見があるんですよ。大体ですね、こうやって意見を聞くと、女性が大体保守的なんですよ。『阿部義晴でいいじゃない。何よ』みたいな」

■下手に壊すなら、大切なものを守れと。

「『やめて!』みたいな。『お願い!』みたいな。ROCK IN JAPANのフェスで、『昔の曲やって』みたいな」

■正しい意見ですよね。

「そうそう。『何新曲だけやろうとして、カッコつけてんの?』と。『守りなさい』と。『どうせ、泣きべそかいて帰ってくるくせに』みたいな(笑)」

■あなたは私の手のひらにいるんだから、そのままでいなさいよっていう話ですよね。男と女の関係はどこまで行ってもそこですよね。僕らは女性にいつも見透かされながらもがいている。

「ね(笑)。男はね、意外と変わり目早いんだよね。『ABEDONって日本っぽくね?』みたいな」

■たしかに美味しそうですよね。

「美味しそうだし、おいどんだしみたいな」

■ちょっと薩摩のにおいしますよね。

「しますしね。『それ、ちょっとカッコよくね?』みたいな。じゃあ、BをVにしようとか」

■AVEDONね。そうなると今度は、有名なカメラマン(リチャード・アヴェドン、既に他界)がいるんですよね。

「元々ABEDONが出てきたのは、リチャード・アヴェドンの写真集がスタジオにあったわけ。それで、インターネットのドメイン名を取る時に、abe.co.jpが埋まってたんで、これにしようかって考えたことがあったんですよ。それで、この名前にかけると面白いなと思ったわけ」

■凄い話ですけど。ポートレート写真の歴史を変えた偉人の名前からヒントを得て。

「写真は本当に素晴らしいですよ。ですから、ちょっとカッコいんじゃない?みたいな。でも、AVEDONでみんな通ってるわけですから、『これはなかなかABEDONって言わせるのは難しいぜ』みたいになるんですよ。じゃあ、何とかABEDONにすりゃいいんじゃない?みたいな話になるわけ」

■あははははは。

「リチャード・アヴェドンとかね。そういうのをつければいいんだっていうことで、yoshiharu avedonにすれば――」

■どんどん謎な物体になってくんですが(笑)。

「(笑)まあ、こんなバカ話を繰り返したわけですよ。なんだけど、こういう時は、いろんなものをやってみたくなるんですよね。成分分析とかあるじゃないですか。画数とか、いろいろ調べてみたりとか。やってもほとんど信じないんですけどね(笑)。で、今のところ固まっているのは、『DON』でいいじゃない?と」

■DON? それだけ!?

「いやいや違うよ、ABEDONですよ」

■ビックリした(笑)。ただの「ドン」でいくのかと思った。ドン小西じゃないんだから。

「あはははは。今の所、ABEDONでいいじゃないかと。ABEDONで行く予定です。はい」

■凄い率直なこと訊いていいですか? 阿部さんは、外人になりたいの?

「いいや………凄い質問だね、それ(笑)。なんか、簡単な名前が欲しかったんだよね。『希望』みたいなさ、何でもよかったんだけど」

■僕は、読者の皆さんから「しかっぺ」って呼ばれてるんですよ。

「あ、そうだね」

■それと同じようなことですか?

「そうそうそう。今回の作品を出すにあたって、そういう称号を変えると面白いかなと。だから、YO-KINGみたいなもんなんですよ」

■なるほど、よくわかりました。でも一つだけ嫌なのは、今後インタヴューで「あべどんはどう?」とか訊かなくちゃいけないんでしょ? それは本当にズッコけますよ、これ。YO-KINGに「YO-KINGは」って訊かないもん、俺。「倉持くんは」とか、言っても「KING」で済ましちゃいますからね(笑)。

「そうかそうか(笑)。でもね、作品をする時のペンネームだから。アイコンだから、ABEDONは。だから、ABEDONで作品を出すけど、俺は阿部義晴だよ!」

■50間近の2人で相当気持ち悪い会話をしてますが。言ってみれば、ペンネームですよね。

「じゃ、それで! ペンネームをABEDONにしてみます」

■それにしても結構思い切りましたね。

「いいでしょ? 何しろ検索して、俺の昔の写真が出てくるのが嫌なの。もう、業界30年目なんで」

■はぁ~、それは素晴らしい発想ですね。いや、自分も名前変えたくなりました、一瞬。

「はははははは! でしょ? ちょっと魅力あるでしょ?」

■もう、いらないよね。過去の云々とか、看板とか権威とかアホさとか全部。

「そうなんだよ! 全部いらないんだって。俺は今がその時だと思う」

■そっか。じゃあ、阿部さん行け!

「行くよ! 俺は行くよ! なかなか勇気いるけどね」

■めっちゃ共感してきました。

「ははははははは。ついでに、ユニコーンでもABEDONにしようと思って」

■あはは、それは危ないわ。

「そう? みんな改名ブームを起こそうと思って。で、さらに仲よくなれるっていう。これどうかな(笑)。そういうのがあるとさ、新しいおもちゃが増えたみたいで面白いでしょ? なんかいろいろと面白くなりそうな片鱗があるでしょ?」

■なんか、完全に退路を断った気がするね。

「ああ、そうね。そんなつもりないけどね(笑)」

■頑張ってください!(完全に共感モードで、顔を赤らめながら応援しまくっている)

「まあ、適当に」

■いや、頑張ってくださいよ。思いっ切り。

「普通にやりますよ」

■あ、そう?

「大事なことだから、普通にやるんですよ」

■そうですね。フラットに、あるがままに。

「そうなんです。世の中で勘違いしちゃいけないのは、大事な瞬間に向かう時ほど、普通でいなきゃいけないっていう」

■無理して踏み切っちゃいけないっていうね。

「そう。頑張っちゃいけないの。パットゴルフやったことありますよね? 大事なパットほど、うちから入っちゃダメですよ。これは余計な話でしたけど、まずはジャケット撮影やりましたよ」

■ABEDON初の写真を?

「いきなり凄い力入っちゃって」

■あはははははははは!

「こういう時だからこそ力を抜きなさいと、僕は今自分に言い聞かせてますよ」

■阿部さん、アルバムはいつ出すの? 今時点では完成してないよね?

「でもね、今月中に完成させますよ。やります!」

■そしたらまたお会いしたいっすよ。

「ぜひとも。もう、鹿野くんの仕事も振り分けてありますから」

■振り分けてあるんだ(笑)。わかりました。

「働いてもらわないと困るから、鹿野くんにはABEDONになっても一緒に」

■どんな仕事だろ。

「もう分類は決まってる。鹿野さんはここにポジションしてもらいますみたいな」

■それ、シュウマイ弁当のシュウマイだったらいいな。

「どういうこと?」

■シュウマイ弁当の甘いたけのことか、あーいう感じなら嫌なの。

「ああ、割と人気のないポジションだよね(笑)」

■そうそう。美味いんだけど、残されてんだよね、あいつ。

「そうなんだ。キツイね。そうはさせないよ、ABEDONは人を不幸にはしないから! 心機一転、ABEDONを楽しみにしててください!」


 というわけで、阿部義晴ソロ3部作の終わりは、新たなる壮大な物語の始まりだったんですね。名前が『ABEDON』だけに、『ハルマゲドン』みたいですが。
 ここで詳細を整理しましょう。
 阿部義晴一世一代の改名アルバムの名前は『BLACK AND WHITE』。『R(レッド)』、『G(グリーン)』、『B(ブルー)』の次なる世界は白黒の世界。これ如何に!?
 リリース日は3月5日。全12曲中、新曲が3曲含まれています。ちなみに新曲の中に“Beautiful Day”という、もの凄い名曲がありますので、何しろ楽しみにしていてください。
 しかも今回、リリースが2種類あります。これ、初回特典がどうのとかいう話ではありませんよ? 3部作と同じSMALLER RECORDINGSSのみならず、Ki/oon MUSIC Inc.からもリリースされます。シンプルに言えば、インディーズとメジャーの両方からリリースされるわけです。これもなかなかあり得ない、画期的なリリース手段ですね。
 そのメジャーのキューン盤には、「手島いさむ50祭 ワシモ半世紀」の時の阿部民バンドのライヴ音源が2曲、ボーナストラックとして収録されています。
 インディーズのスモーラー盤はDVD との2枚組です。こっちは3部作から3曲のミュージックビデオと、僕がお相手を務めたインタヴュー映像が入ってます。これ、簡単に言えば「見えて動く、阿部ちゃんと海」です(笑)。すでに年末にロケは終わってまして、ただいま絶賛編集中。鎌倉、江ノ島にて快晴の中のロケ、そしてABEDON STUDIO(1173 STUDIO)の全貌がわかる貴重な映像&語録集になってますので、是非ご覧下さいね。

 それでは、長い間、阿部ちゃんと海を楽しんで頂き、ありがとうございました。またどこかで、今度は「ABEDONと海」が始まることを願いつつ、これにて終了っ!!

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