「B」 > vol.2
MUSICA
 遂にリリースされました、阿部義晴ソロ三部作の三枚目の正直、『B』。ゲットしましたか? 聴きましたか? もの凄い聞き応えの作品ですよね。そもそも阿部ちゃんの楽曲は創造性とポップのバランスが見事なものが多いのですが、この作品の中にある4曲は、目を瞑って聴けば、それだけで「あなたの世界」が広がる。何と言うか、いろいろな人の心象風景そのもののような作品です。
 阿部ちゃん自身も、ホップ・ステップ・ジャンプで言う所のジャンプ!的な作品、つまりは「ワンピース」な作品であることをーーついつい少年ジャンプにかけてしまいましたがーー勝負作であり、総決算であることを体で感じていたのでしょう。いつも以上に覚醒感のある、まるで「遺作」のような作品となっています(勿論、阿部ちゃんはここで死にましぇん!)。
 今回は『B』編2回目ということで、怒濤の全曲解説をやってみました。あまりのボリューム、いや、あまりの脱線故に、2回に分ける事になりましたが、まずは一曲目“サヨナラサムライ”、そして2曲目“白い虹”までをお楽しみください。

■では今回も、恒例の1曲1曲解説にいこうと思います。トップの曲は、“サヨナラサムライ”。グルーヴがメインになっている、ある意味シリアスな「どロック」だと思うんですけど。

「(質問に耳を貸さずにカメラマンの方を向きながら)もう大丈夫そう? オッケー? はぁぁぁ(と言いながら、突然サングラスを外す)」

■ん、疲れたんですか?

「一応さ、1回目素メガネだったから、2回目ブルーのメガネにして。だから、3回目の今日は同じメガネじゃダメだと思って、このメガネ(サングラス)を持ってきたの」

■ほー。

「このメガネ、結構気合いが入るんだよ。なんか、気遣うのよ。サングラスをしてインタヴューを受けると気遣うのよ、こっち側が」

■でも、(インタヴュアーとの)距離感を取るためにサングラスをかけるアーティストも多いですけどね。

「ああ、そうなんだ。浜田省吾さんが、僕が18の時、スタジオにいたんですよ。『芸能人だ! すげぇ!』と思って。サングラスをかけてたんですよ、スタジオの中でも」

■(笑)まあそうですよね。天下のハマショーですから。あれはサングラスじゃないですよ。もう細胞の一部というか。

「ははははははは! でも僕は思いましたよ、『なんて奴だ』と。『取りなさい』と(笑)」

■天下のハマショーに(笑)。何て失礼な若者だ!

「いやいや(笑)。子供心に、家に帰ったら帽子を脱ぐ、サングラスを取る、帽子を脱ぐ、コートを脱ぐ(笑)」

■スタジオは聖なる場所なわけですよね。サングラスなんかもってのほかだと。

「そうそうそう! もってのほかだと。……っていう感じで思ったんで、僕、サングラスしてるほうが気遣うんですよ」

■なるほど。こっちとしては目を見て話せるわけで、そこから心の奥が見えてきますから嬉しい限りですが。

「たとえば、ミラーがかかってるサングラスとかあるじゃん? あれすると、鹿野さんだったら僕のサングラスを通して自分の顔が見えるわけでしょ? それってやり辛そうだよね。『この人、自分の顔見ながら喋ってんのかな?』とかさ」

■「滑稽だな」みたいな。

「『気の毒だなぁ』って考えるわけですよ!(笑)」

■あはははは!

「ろくなことにならないでしょ、インタヴューがさ。ろくなことにならないっていうか、気遣うからさ」

■阿部さん、本当に面白いね。

「だから今日ね、鹿野くんにも悪いし、そうやって自分の顔見ながらインタヴューしていただくのもなんか気の毒だなと思って、今からサングラスを外しますよ。写真も沢山撮ったしね」

■というわけで、曲解説行きますよ。“サヨナラサムライ”は、非常にシリアスなロックナンバーで。ドラムの音とかかなり80年代~90年代のロックの王道を感じるような――重いんだけど、デジタル感もある――ものになっていて、込み上げてくるものがあった曲なんですが。

「なるほどね。そりゃよかったです………これ、どうだっけな?(笑)…………どっからできたんだろう? この『B』っていう作品が全体的に――1枚目(『R』)にシングル的なものを作ってしまって、2枚目(『G』)にライヴとかで必要な、ロックミュージシャンに必要なものを作ってしまって、『さあ!』って時の1枚なんです。ここでたぶん、私のポテンシャルがすべて発揮できるというとこなんですよね」

■まさに満を持してね。

「『もうノルマ終わりね』っていう状態でここに入れたんですよ。実際に作品としての各曲の粒は揃ってるっていうか。なので、凄く実験をできるっていうふうに考えていたんですよね。だから……エレクトリックとギターサウンドっていうか、割と今のロックというか。そんな感じはどうだろう?ということで、リズムマシーンを鳴らしてみたっていう。その辺からでき上がっていったのかなぁ。………2000年だかその辺のロックってあるでしょ? なんて言うの? オルタナティヴ?」

■「オルタナ」ですね。

「あんな雰囲気とデジタルなものを合わせたら面白そうだなっていうような感じでやりましたよ」

■今回の作品、4曲目は非常にアウトロ的な発想が強い曲なんですが。その曲を除いた3曲で一貫して感じるのは、ダイナミックさとドラマチックさなんですよね。それは、歌詞とサウンドと両方ともそうで。

「なるほど」

■その辺は最初からコンセプトにあったんですか?

「えっと………やっぱ、フルに発揮するわけですから。それぞれの曲がメインディッシュになりがちですよ、自分の中では。で、割と時間もかけましたし、しかも自由に作ってるんで大胆な曲になりますよね。僕、ピアノ得意なんで(笑)、割と繊細なものから行くんですが、ギターも弾くんで、暴力的なものまで両方使ってみたくなるんですよね。そのコントラストって、凄く面白いじゃないですか。ミニマムなものからデカいものまで、ダイナミックをフルに活用しちゃうっていうか。それは、『R』とか『G』とかでは、やらなかったことなんですよね」

■確かにそうでしたね。何故やらなかったのかと言うと――。

「日本のために作ったから(笑)。たぶん、今回のようにいろいろやっちゃうと、聴きづらいと思う人が多いんだよね、日本では。同じような展開やレンジで作った方が、ラジオでもかかりやすいしね。ずーっと同じ音で鳴ってたほうが、この国ではいいんですよ。……今回のような作品は、割とクラシックに近くて。クラシックってラジオで流れてると、ついヴォリューム上げたくなる(笑)。『聴こえねぇな、小っちゃくて』とかね。そういうことで、どうしても世の中的にロックミュージシャンがこういう音楽の作り方を避けてるところがあって。なんだけど、今回はもう(今までの2枚で世の中に対する)ノルマが終わったんで、繊細なのに暴力的な、複雑にも感じられるものをやっているんですよ」

■具体的なものを申し上げてあれなんですけど。たとえば、U2がイギリスを飛び越えて、世界のバンドになった瞬間って、『アクトン・ベイビー』とかあの辺だと思うんですけど――それこそ、ブライアン・イーノとかがプロデューサーになって、そこで生まれてきたものは、ダークさと同時に無限の広がりを持つスペイシーさの両方だったと思うんですよね。レディオヘッドも『OKコンピューター』という作品で、同じようなラジカルな覚醒感を鳴らして。そういうメッセージとか、ロックっていうものに対してのこだわり、ラジカルな世界観、時代に対する不穏さなどを持ってる人達が、ダイナミックになっていく、広がっていく瞬間みたいなものを今回の作品の特に1、2曲目から凄く感じたんですけど。阿部さんの中でそういう意識はあったんですか?

「意識というか、自然とそうなっていくんでしょうね、ちゃんとした自分の音楽を示そうと思ったら。進化っていうか、この時代で音楽をやって、どういうふうにやっていくんだろう?っていうふうに考えていくと、もしかしたらそういうふうになっていくのかもしれない。僕は意識してなくても、自然にそういうふうに音楽がなっていったんじゃないかと思います。ただ、それはちゃんとやった人だけが示せる音楽だと思うし、これもそうなっていればいいなと思いますよ。自分と自分の音楽の正当な進化っていうか、上手いこと進化してるといいなとは自分で思いますけどね。だから………………うーん、ちょっと上手く言えねぇな(笑)」

■要するに、この“サヨナラサムライ”っていうのは、今話してくれたことなんですよね。

「ん?」

■日本向けの「僕」っていうものと、この作品でおさらばするよっていう。その意識がタイトルになっているという意味です。

「上手いこと繋げた! グー! その当時に僕は一冊の本を読んでたんです、『永遠の0』( 百田尚樹著。この冬、映画にもなります)っていうやつをね。面白いなぁと思って。それを読んだ後に書いた歌詞かな? これは」

■第二次世界大戦時のことが描かれている小説だと思いますが、そこからインスパイアされたんですか?

「されてるね。実際の言葉がどうっていうわけじゃなくて、そこで見える風景みたいなのがあるじゃないですか、本を読んで」

■はい。

「その当時のその時の風景みたいなのが。それが僕の中にインプットされてて」

■それは、本の中の世界観じゃなく、それを読んでる自分の空気感っていうことですね。

「そうそうそう。僕が想像してる風景ですよ。あたかもそこに行ったような気分になって読んでいる自分の世界。だから、実際僕が今回の他の曲を海の前で書くのと同じように、本の中でそれを疑似体験して、その風景が頭にあって書いてるのがこの曲です」

■そういうことって結構多いんですか?

「あんまないね」

■大体、本っていうのは、「文字」ですよね。そういうところからインスパイアされるっていうことは?

「ない。けど、今回はされましたね。素晴らしかったんじゃないですか? 本が。……戦時中の話なんで、それを題材にすること自体がタブーとされている世の中もあるじゃないですか。だから、そこら辺に関しても――やっぱりね、日本で日本人として暮らしていく上でよ? 歴史をぞんざいにするような生き方をしちゃいかんですよ。その歴史の積み重ねの上に自分がいるわけでしょ? それ、大げさに言ったら、たぶん問題になりそうな話だけど。そうじゃなくて、歌舞伎とかね、お茶にしても、お花にしても、歴史があってその上でどう発展させるか?っていうのが芸術なわけですよ」

■そうですね。

「絵にしてもそうだし、音楽もそうであるべきなのよ。ただ、音楽はまだ歴史が浅いんで、なかなか脈々と続く血っていうのは見えにくいですけど。圧倒的に歴史を周到して勉強した上で、自分が壊していくっていうものの筈なんですよ、ポップミュージックというのは。歴史を周到した上で、壊すっていうことをやらないと、ただ過去を壊してるだけの音楽にしかならないわけで。――っていうところがあってね。……日本にしても建物をすぐ壊しちゃうし。……真っ当に話せないような戦時中の話もあるし。なんか腑に落ちないなっていうのはある。しかも……年寄りを大事にしない人種は、ろくな人間がいないなみたいな(笑)」

■まあ我々もね、そろそろ大事にされたい世代に入ってきましたよ。

「あははははははははは! それで僕はこんなこと考えてんのかな? でこんなの(=『B』)作っちゃったのか!?(笑)」

■ほんっと大事にされたいけどね(笑)。

「されたいねぇ、本当にね(笑)。まあまあ、それは置いといて。……やっぱり、今の僕は歌詞を書くっていうことに対して、恋とかそういうものが大きく抜けてるんですね。まあ、自分に正直に書いてるんだから逆に抜けてなきゃいけないと思うし、今の自分が思いっ切り恋を歌ったら、『お前、おかしいだろ』って思うんですよね(笑)。自分がですよ? 他の人は知らないけどさ」

■わかります(笑)。嘘の音楽になっちゃうからね。

「僕の表現としては、嘘だっていうことでしょ。それが許せない自分がいるんで、そういうのをあんま書かなくなってるんですよね。それよりも人を好きになったりすることがあるじゃないですか。恋愛とかじゃなくて、若い子と違う好きさみたいなものが――」

■人間自体を、生きること自体を面白がるっていう。

「そういうのを面白がったりとかね。そういうふうなのに向いてるんで。その中のひとつでもあるよね、この曲は。……あの本もさ、そういう意味では、人の本質を描いていて、面白いなと思うよね。ただそうやって言うとね、『これは零戦の曲でしょ?』って言われるよね? それは嫌なんですよ。まったく違うんで。風景がそういう風景――たとえば、戦闘機で飛んでたりすると、『きっと海の上飛ぶわけだから、下はキラキラしてんだろうなぁ』とか、『戦争って、狂気の中ですげぇ綺麗に見えんのかな』とか、『そういう風な状態で見える光ってなんだろうな?』とか、そういうほうに気持ちが向いてるんで」

■なるほど。2曲目の“白い虹”も本質的には今語ったようなことが根付いている歌だと思っているんですが。具体的には、非常に根深い死生観が表されてますよね。

「はい。これはもう、完全に今鹿野くんが話してくれたことを意図して書いてますね。しかも、自分の風景を。自分が普段見てる自分の風景をそのまま割と出そうかなって思って書きましたよ。固有名詞にしても、風景にしても、割と自分を素直に出そうということをしましたね。非常にある意味無防備な曲なんですけど、一番真実でもある曲だという」

■例えば、<海岸線をつたい 江の電は走る>と。これは阿部さんが今回の1年間創作をし続けてきたスタジオ周辺から観た、完全なドキュメンタリーですよね。

「そうだね(笑)」

■これ以上の無防備さはない。

「ない(笑)。場所特定できそうだもん!」

■どこの駅だ?っていう話ですよ。江の電、海岸線を走る場所、ある程度限定されるし。

「されてるしね! 坂道あるしね。遮断機あるしね(笑)」

■(笑)この<白い虹を 駆け上がり>っていう、こういう歌詞を歌いたかったのは、どうしてなんでしょうか?

「……………美しいものとか、感動するものって、嘘がないんですよね。で都会にいると、途端に嘘が見えるんですよね、いろんなものに対して。作品的にも、『なんかカッコよく見せようと作ってる』とか、『あの時計のデザインはちょっとあそこを狙ってる』とか、『このテレビはこれを売りにして作られたな』とか、そういうものが見えると、まったく自分の中で何も響かなくなってるんですよ」

■驚きがないっていうことですよね。

「そうそう、驚きがないですね。単純に注がれる光だったりとか、太陽だったりとか、ああいうものは僕を感動させようと思ってないんですよ。そもそも僕の心の中に入ろうとしてないんですから」

■ただただ、ひたすらそこにあるっていう。

「それに嘘はないわけで、感動するわけですね。『あ、そっか。じゃあ、俺は自然を作りたいんだ』と思うわけですよ。で、自然を作ろうと思って、自然を作るじゃないですか。すると、それが嘘になるんですよ」

■それ自体がコンセプトになってしまうと。

「はい。例えば、自然を意識して作った公園とかは、嘘の産物なんですよね。じゃあ、本当に人の中に入っていくものっていうのはなんだ?っていう。太陽を作れるわけじゃないし、雲を作れるわけじゃないし、石の微妙な形を作れるわけでもないし。……で、今のところの結論としては、俺が有機物であるからには、俺自体も土と一緒なわけで、俺のことを書けば、それは太陽が言ってるのと一緒なんじゃないかという話。……なんてへんちくりんな話で、理解不可能だと思うでしょうが」

■全然そんなことないと思いますよ。もの凄く真理だと思いますよ。結局、自然であるということは、自分が何を考えているかでもどんなことをできるかでもなく、ただただここに存在しているってことなわけですから。

「そうなんですよ! という考えがあるので、この曲でその気持ちを出すべきだと思い、敢えて書いたんですよね。で、今まで色がテーマになっていたので、3作分の色光を合わせると、黒か白になるわけじゃないですか」

■そうですよね。レッドとグリーンとブルーをテレビ画面で合わせると、真っ白になるんですよね。

「なりますね」

■そして、印刷物で合わせると、真っ黒になるんですよ。

「だから、究極のところをいくと、白か黒でしょ? この曲は、その『白』について書いたんですよ」

■そこでブラックじゃなくてホワイトだったのは、何故なんでしょうね?

「明るいから。白にはやっぱり希望があるでしょう。単純に今、僕は暗いものをあんま書きたくないんだよ。明るいものを書きたい、世の中に対してね」

■明るくないからですよね? 世の中が。

「うん、面白くないから。……素敵じゃないですか、“白い虹”っていう響きも。想像しただけで変でしょ?っちゅうことで書き出したっていうか」

■<良く晴れた朝に その虹はうかぶ>と。非常に輝かしい<朝>という始まりから、この歌は始まり、阿部さんの日常である景色が歌われ。

「ふふふふふ」

■その後、<子供達へ 大人達は 風になる>と。僕は非常にネガティヴな人間なもので――。

「俺もよ? ははははは!」

■<子供達へ 大人達は 風になる>っていう言葉から、我々は死へ向かって、風という消えてく存在になるんだと。しかしそれでも残せるものがある、それはこの音楽だという。そういう、「消えていく自分」、そして「消えない音楽」っていう事を表した曲だと思いました。つまり、非常に壮大なメッセージソングになってると思うんですよね。

「なるほど。そういうことでしょうね」

■本当に?

「はい。そういうことでしょう。歌詞については、なかなか言葉を選ぶんですけど。今、鹿野くんからそういう話が出たんで、それはそうなんですよ。………世代が変わって、でも世代が繋がってるっていうイメージがあって。その繋げるものがなんなのか?が意図だったりするわけですよ。それが歌詞で言うなら<鳥>なんですけどね。その鳥が持ってくるのが、命なんだよ」

■はい。

「なんかそんなようなイメージがあってね。それを繋いだら、美しくね?みたいな(笑)。なんかよくない?みたいな(笑)。世の中そういうもんだよね、みたいな。それでいったら素晴らしくない?みたいな――そういうことは考えましたよ」

■実はこの連載の中で、「一番最初に曲ができちゃって。でもそれはこのシリーズ全体のテーマソングになるような曲で。だから最後に置いといて」っていうことを何度か話しているんですけど――僕は、この“白い虹”のことなんじゃないかなって思っていたんですけど。

「そうです。まさにこの曲ですね。鹿野くんが夏にスタジオに来てくれた時に、お聴かせしたじゃないですか。そう、全てはここに向かってったところもあるよね。だから、こいつがカギなんだよね、この3枚のシリーズの。こいつを録りたくて、うずうずしてたもん、ずっと」

■特に、後半の<どこまでも>から速くなっていく部分、これはサビっていうんですか?

「サビ」

■ここのメロディは、本当に秀逸です。圧巻です。

「ありがとうございます。あのですね……………」

■どうしたんすか?(笑)。

「そこはですね……そんなに熱く言っていただいたものをぶち壊すようでなんですけど」

■はぁ。

「僕、インターネットのYouTubeを観てたんですよ。そしたら、『日本のヒットソングの共通コード進行』っていうのがあったんだよね(笑)。で、それを実現してくれてるわけですよ。これはこれ、これもこれ、“大迷惑”もこれ、みたいな(笑)」

■それって、よく言われてるカノン進行とかそういうことなんですか?

「いや、そうじゃないみたいで。自分も今まで知らなかったものだったから、へぇ~と思って。で、それを参考にピアノで弾いたんですよ。で、歌ったら、これになった(笑)」

■あら。

「『これはヒットせざるを得ないだろう!』っていう話ですよ、これ(笑)」

■確かに。

「これでヒットしなかったら、どうすんだ?っていうね」

■でもそれ、また微妙な話じゃないですか。

「いや。どうだろう?と思うと、実験したくなるわけよ(笑)。これを聴いた人はどう思うんだろう?とか。実際ね、ピアノで弾いてすぐにわかったんですけど、エモーショナルに聴こえるわけ。で、日本人が好きなのわかるんだよね」

■それって、和音の問題?

「そう。コード進行ね。メロディはYouTubeにはないですよ。そのコードをピアノで弾いて。4つぐらいのコードかな? コード4つぐらい――だから、8小節ぐらいか? それを弾きながら、メロディを作っていったんですよ。だから、割と反応が楽しみなんですよね」

■逆に訊きたいんですけど、鉄則って、いろんな鉄則があるわけじゃないですか。さっき僕が申し上げた、カノン進行と言われてるものとか、音楽説としていろんなものがある。

「カノン進行とか、クリシェとかあるよね」

■そう。だからヒット曲は誰でも書けるんだということを――そういう力学を基にしていう方もいる。プラス、僕は今までにヒット曲を書いた人とたくさんインタヴューしてきました。みなさん、「あの曲のような曲は、自分はいつでも書けるんだ」と言うんですよ。

「ふーん」

■でも、俺は書けないと思うんですよね。確かに同じコード進行を使って「らしい」曲はできるけど、いい曲やヒット曲ができるかって言ったら、それは最終的に人がそこにエキスを垂らさないと――醤油か塩と合わさないと、味も何もつきやしないと思う。

「そりゃそうだ!」

■だから名曲を書いた人が、「いつでもその曲は書けるんだ」と言うけど、書けないんじゃないのかな?と思っていて。

「いや、その通りなんですよ。なかなか書けないでしょう、自分含めて」

■僕は、それほど音楽というものは、自由であるとともに、苦しいものというか、難しいものだと思うんですよね。

「そうなんです。だから、今お話ししたコード進行の話っていうのは、実はいたずら話で。だから、変にとられたら申し訳ないんだけど、本当にいたずら心で、『へぇ』っていうだけのものなんですよ。『ちょっとおちょくってやろうかな?』みたいなことですよ。でも、やることは真剣にやってるんで。そのおちょくりの後からは夢中になってる。だって人が感じるところは、そんなコードの鉄則だけじゃないことは確かなんで。音楽のいい/悪いは、そこだけじゃ生まれないんですよ」

■阿部さん。人はこういう歌をソウルミュージックと呼ぶんだと思います。

「そうですか。それは嬉しいです。この“白い虹”のためにこの3部作があったと言っても過言ではない曲ですからね」

■楽しみですね、反応が。

「ははははは! いや、みんながこの鉄則につられてくれると面白いよね(笑)」

■はははは。

「『やっぱりこれか』みたいなね(笑)」

■「そっか!」みたいなね(笑)。

「『こうか!』みたいな(笑)。ま、二度と使わないけどね、そうなると。それって芸術家の――」

■手垢ですよね。

「そう。首を絞めることになると思うんだよね。同じもの作らなきゃいけなくなっちゃうからね。それこそ芸術家としてあんまり理想じゃないね。その形は。逆にもう使わないよね、そうなってくるとね」


 なんかあらためて、阿部ちゃん凄い!って思う語録の数々でした。次回は全曲解説後編の“BackGRound”と“再会”ですよ。
 お楽しみに!

「B」
2013年12月4日 ON SALE
1.サヨナラサムライ
2.白い虹
3.BackGRound
4.再会
¥2,100(incl. tax)

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"白い虹" PV