「G」 > vol.2
MUSICA
(まずは先週のまとめ)
「阿部ちゃんと海」と銘打って、 ユニコーン復活後のフレッシュな阿部義晴のソロ活動を金魚のフンの如く、いやいや、手となり足となり追いかけ続けるWEB連載企画。
目出たくリリースされたEP『R』への阿部ちゃんの心の旅を紐解く第二回目は、「阿部ちゃんがソロをやりたくなっちゃった3つの理由」。そして遂にここで何故この連載のタイトルに海が出てくるのか? その秘宝が明らかになります。
阿部義晴独特の世界観、仕事のスタイル、何故阿部ちゃんの音楽の景色は海よりも山よりも大きくて広いのか? そのことがむにゅっとわかる内容になってますので、みなさんメモの用意を。
では阿部ちゃん流「か~な~ら~ず~最後に海は勝つ~♪」スピーチをお読みください。

「実は僕、曲を作るペースが遅いんですよ」

■そうなんですか?

「もの凄く遅いんです(笑)。アルバムを作りますってなった場合、ユニコーン内の話をすると、(奥田)民生くんも3人でやってるの、3ヶ月くらいで出しましたよね(奥田民生、真心ブラザーズのYO-KING、桜井秀俊によるバンド『地球三兄弟』のこと)。で、手島(いさむ)くん達(手島いさむ、川西幸一、EBIによるバンド『電大』のこと)はもっと速いペースで動いてるじゃないですか。僕はアルバム1枚出すってなると、どうしても制作だけで1年かかっちゃうんです。どういう方向に進むか? どういうふうにするか?っていうことから始まるので。作業自体は速いんですよ?(ユニコーンとして)最新の“Feel So Moon”だと、曲を書きましょうってなってから、まずリサーチに3週間かかったんですよ。そのあいだにどんどんストレスを自分の中に溜め込んでいって、溜まって溜まって溜まって、3日で(曲が)でき上がって、2日でそれを録るというイメージなんですよね。だから、その空白の3週間っていうのが非常に大事で、僕はその時間がないと音楽が出来ないんですよ。だから遅いとわかっててもやめられない(笑)」

■漫画家や作家みたいな書き方ですよね。彼らの多くも、リサーチと妄想の繰り返しだけを延々やって、締め切りをとうに過ぎて「いい加減にしてくれ!」と言われた何日間か後から、「よーし!」とスイッチが入って爆発していくっていう。実は完全に僕もその一人なんですけど。

「ははははははは。そうね、その感じですね。だから、他人から見ればソファーで寝てるだけっていうこともあるから」

■それを人はリサーチとは呼ばない、という時間が多いという。

「(笑)でも、僕にとってそれは大事な時間なんですよ! 日向ぼっこしながらね(笑)」

■人には理解してもらいがたい話だけど、阿部さんにとっては365日×24時間のうち起きてる時間は、ほとんど音楽のことを考えちゃってるんだっていうことですよね。

「そうなんですよね」

■これはね、僕は理解できますけど、世の中の人の大多数は理解してくれない話ですよ(笑)。

「そうなんだ(笑)。でもね、そういう人が勝ちますよ、間違いなく。僕が実証しますから。ユニコーンもそうですしね。ユニコーンも(実際の活動に)入るまで、誰から話す? どういうふうに攻める?って自分の頭の中で1年以上作戦を練ってるんで。でも、実際に行動を起こしてからは速いんですよ」

■今回も、溜めに溜めてドバッという。

「そうですね。今回は、今言った3つの要因が合致したんですね。ついでに、ユニコーンを再結成してそれを成功させたっていう自負もあり、その冠もあるんで、こういうタイミングだから割と表を向いたものを作ったほうがいいのかなと思ったんですよね。みんなが聴いて『わーい!』って喜べるようなもの。ついでに事務所も儲かるといいな、みたいな(笑)。やっぱりね、関わりが多くなるとみんなが喜んでるのを見ると嬉しいでしょ。 だからまず最初に、シングルになってもいいような表向きなものをとりあえず面倒くさいから作っちまえ!っていうことで、今回これを書いたわけですよ」

■“SUN SET SUN”は、まさにそういう曲になってると思うんですけど、今の阿部さんの発言だけだと、どポップで明るくて勢いのある曲なんだろうなと思われるかもしれないんですけど、実際には非常に感動的な曲というか。僕は、この1曲目のインストの曲(“RGBOP”)からシングル全曲含めて、宮崎駿のサントラになればいいんじゃないかと思った。

「そんな大それた(笑)。スイマセンねぇ」

■それくらい世代も選ばない、人の心に1個1個何かを刻みつけようとしていく音楽という印象を持ったんですけど、ご自分の中ではどういう気持ちを込めて曲を作っていったんですか?

「ズバリそれでっ! あははははは……」

■オチ逃げしないでくださいよ。

「さすが常に活字を扱ってる方は素晴らしい!! だから、それで!」

■阿部さんの曲って凄く絵とか物語りが浮かぶ曲が多くて。特にソロの曲はそうですよね。その辺はご自分の中では何か意識しているんですか?

「それは自分で自覚してますね。なぜかわからないけどそうなることは多いですね。だから僕、映画音楽は向いてると思います。実際、曲を書く前に自分でその曲の絵を描くこともあるんですよ。それを見ながら作ってみるとか、もしくは、曲のために写真を撮ってその写真を見て書くとか。この“SUN SET SUN”の場合は、とある海沿いのハンバーガーショップの駐車場があるんですけど、そこに車を停めまして、そこで書くべきだと思ったので、そこで1日粘って書きました」

■駐車場の車の中でひとりで粘ってたの?

「でも有料駐車場ですからね。ま、500円分買うと1時間安くなるんですけど(笑)」

■(笑)というか、そこにずっといるの? それ、職質レベルの行為でしょ。

「はははははははは! でも、そこで書くべきだと思って、書いたんですよ」

■面白いですね。それは、別に海を見てるわけじゃなくて、マンウォッチングなんですか?

「マンというよりも、雰囲気とか風とか空気とか色とか。人を対象にすると、どうしても言葉がそのまま即物的なものとして表れちゃうんですよ。じゃなくてもっと印象的なものですね。ボヤっとした色とかキツい空気を見てるというか。あとやっぱり、景色が広がってると精神的にもいいんですよ。修行じゃないんで、狭いところよりも目の前が広くあったほうが気持ち的にもラクだからっていうのもある。やっぱり、自然は圧倒的に美しいですからね。何が美しいって、美しいと思わせてないところが美しいですよね」

■意志が働いてないというかね。ただただ生存本能みたいなものだけが強いっていう。

「強い。それがやっぱり素晴らしいじゃないですか。それは、都会にはない部分ではあるよね。カッコよく作ろうとすると、それがわかっちゃうでしょ? 若い時はそれで素晴らしいなんて思っちゃうけど、ある程度いろいろ見たり喜んだり悲しんだりしてると、そういうのってわかってきちゃう。それも含めて、圧倒的に信用できるのはハンバーガーショップの駐車場ですよ(笑)」

■失礼を承知で敢えて言いますけど、阿部さんは職人的なキャリアもたくさんあるし、たしか音楽のキャリアは専門学校から始まってますよね。そういうエンジニア的なものを目指してこの世界に入ったのに、こうやって絵画のように音楽を作る発想になっていったのは、どこかで転機があった んですか?

「いや、何も変わってないと思いますね。……あの頃といつまで経っても同じなんですよ。僕、それはラッキーだって自分で思ってるんです。っていうのは、バカみたいにヒットしてるわけじゃないしね(笑)。ユニコーンにしたって、売れたって言われてるけど、アレ大して売れてないですよ。だから思い上がりもしなかったし。なんて言うんだろう、一般人でいられるための境界線ギリギリのところにいられたっていうか」

■自分の立場を誤解しちゃわないっていうことですよね。

「はい。だからいつでも一般人に戻れたというか。そこを越えてしまうと、偉くなっちゃうもんで周りがみんなオッケーしちゃうんですよ。そうなると、自分の頭の中が客観的じゃなくなるっていうか。さっき言ったように変わってしまうと思うんですよね」

■俗に言う、足元が見えなくなるっていうことですよね。

「うん。そうすると、音楽の作り方も変わってくると思うんですよね。壊すことをどんどんしなくなるし、より職業的になる。でもそれで居心地がいいし、それでお金にもなる。そういう意味では、特に僕はラッキーだったかなって思います。だからその頃と変わってないんですよ。今回、SMALLERさん(SMALLER RECORDINGS)から出すんですけど、インディーズっていう部分もいいなあと思ったんですよね」

■なるほどね。今回、3曲とも少年の歌だと思うんですね。1曲目の“SUN SET SUN”が一番わかりやすいんですけど、全部の曲が空だったり上を見てるんですよ。人って、生きているとどんどん目の位置が下に下がっていくというか――。

「うん、いろんなもの下がってくよね(笑)」

■そうそうそう(笑)。そうやってメルトダウンしていくことが、大人になっていくことなのかっていうことをみんなどこかで受け止めて過ごしていると思うんです。けど、この3曲は全部上を向いている。それは、少年の気持ちが音楽になってるからなんじゃないかなと思ったんですよね。

「だから最初の話に戻るけど、僕は自分でも不器用だって思うんですよね。もっと上手いことやりゃあいいのにさぁ(笑)。でも、純粋に正直に生きることは凄く難しくて凄く立派なことだなと子供の頃から思ってて、それはうちのじいちゃんからも言われてたんですよ(笑)。真実っていうものに対して生きていかなきゃダメだって言われてたんで、どうも堅苦しいところがあるっていうかね。それってどうなんでしょうね?(笑)」

■とても阿部さんなエピソードだよね。芯が何なのかをはっきり出すから、何でも出来るしブレないっていうね。

「そっかぁ……曲を書く時もほとんど実際に上を向いてるね。見下ろして書くことはないですね」

■そういう心象風景が全部見える曲ですよね。

「どうしても出ちゃうね。だから、どこで制作作業をやるかとか、どこに住むかっていうことは大事だと思いますよぉ」

いよいよお次は『R』シリーズ最終回にして、次回作『G』へのバトンを継ぐ回になりますよ。
音楽を鳴らすという事は、すなわち次の世代や世界に意識をつなげる事だと。歌を歌う事は、すなわちリスナーが知らなかった世界を見せる事だと。そして音楽を続けることは、すなわち新たな音楽を目指すものへの道を作り出す事だと。
そんなことはわかってると、今日も海辺の駐車場で人々をストークしながら、いやいや、悲喜交々ある中で淡々と射す光と、時に静かに、時に感情的に、まるで僕らの日々のように気ままに吹く風を浴びながら作った、我らが阿部ちゃんの音楽の気持ちを、次も楽しんでくださいね。
それではまた、ここでお会いしまSHOW !!

阿部ちゃん流、三種の神器を開陳かと思えば、いきなり3つ目の武器は「遅漏」、いやいや「遅いことこそ、素晴らしい音楽に通じる道」だと言い出しましたよ。この逆転の発想の裏側にはどんな「アベノロジカル」があるのか? それは連載2回目を楽しみにしてください。
それでは続きは来週に続くのでR。
次号は5月22日更新

「R」
2013年5月8日 ON SALE
1.RGBOP
2.SUN SET SUN
3.Round & High
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